トンネル図書館-今月のおすすめ本-

「服を着る」ということから、暮らしを考えてみよう。

2020.06.01

毎月テーマを決めて、トンネル図書館のおすすめ本をピックアップしてご紹介します。

6月のテーマは「服を着る」。服を着るのは人間特有の文化です。なぜありのままの身体=自然の状態では事足りずに、それを耕し加工するのでしょうか。その行いには身体の保護という点のみでは語れない、人が人として生きるための本質が潜んでいる気がします。「装う」という行為は自己完結するものではなく、当人の意識の有無に関わらず、必ず他者の視点=社会が存在しているのです。自己と社会の間にある身体、その身体を装飾することに人は一体なにを求めるているのでしょうか。日々当たり前に繰り返す「服を着る」という行為を改めて考えてみるのにおすすめの5冊を紹介します。


1、コスプレする社会―サブカルチャーの身体文化
成実 弘至 (編集)/2009年
身近になったと言いつつも、人によってはやはりどこか異質な存在であるのに違いないコスプレ。その動機は自分が楽しいから、満足するからやる、だ。ではなぜ楽しいと思えるのか、満足できるのか…それを客観的に分析したのが本書であり、人はなぜ「装う」のかについて深く考察することができる。精神世界と外界の間にある身体を装うことで、私達人間は何を他者に伝えたいのか。自分自身の「装い」についても見直したくなった。


2、(un)FASHION
TIBOR+MAIRA KALMAN/ 2000年
この写真集は、暮らしと密接に繋がった多種多様な“装い”の記録で埋め尽くされている。スリランカの農家、フランスの煙突掃除人、グアテマラの路上生活者、ナイジェリアの故人とその家族。キャプションもなく淡々と並べられる生活者とその装い。そこでは人種や社会的規範の目線など全くもって野暮であり、人間の尊厳が静かに溢れているのみだ。流行を装う狭義な”ファッション”ではなく、人間の本質的な行為としての「装い」を作者は問うている。


3、ひとはなぜ服を着るのか
鷲田 清一/1998
”服を着る”という行為が人を人たらしめる所以を哲学した一冊。自己と身体、身体と衣服、衣服を纏い拡張した自己と他者の間。それぞれの余白に、人は隔たりではなく連続したアイデンティティを構築していく。流行(モード)に溶け込むことによる自己表現は、皮肉にも個の均質化と両立する。それでも人は服を着て、他との差異を認識する。服は身体をラッピングする表面的なファッションではない。自己そして身体との連続にある”第二の皮膚”であり、これを通して人は自己認識を繰り返すのだ。


4、SAPEURS −THE GENTLEMEN OF BACONGO
Daniele Tamagni/2015
平和のための装いと振る舞い。コンゴ共和国の首都郊外に、ヨーロッパの高級スーツを着こなす特異なファッション集団がいる。”サプール”と呼ばれる彼らは、身に纏う洋服だけでなく、色の調和に始まり歩き方や振る舞いなどの所作、まちを練り歩く際の演出に至るまで徹底的にこだわり抜いたスタイルを確立している。その姿はまちの人々の羨望の的であり、憧れる若者も多い。まだ内戦の影響が残るコンゴで彼らが貫く装いと振る舞いは、武器より強い。まさしく最強のエレガンスだ。


5、ファッションで社会学する
藤田 結子 、成実 弘至、辻 泉 (編)/2017
私たちに身近な「ファッション」を入り口にして、「社会学」を学ぶきっかけをくれる。ファッションは芸術やデザイン、経済といった分野のみならず、その奥にはメディア、ジェンター、労働、都市など様々な分野の世界へと繋がっており、それらをわかりやすく解説してくれる。自分たちの暮らしを取り巻く社会を俯瞰して捉えてみることができるだけでなく、分析の仕方やインタビューの仕方など、社会学を研究するために必要なノウハウも教えてくれるので、まさに「社会学入門」な本。学生にもおすすめの1冊。

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