Ecole Libreの現場から
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Vol.12 会話の力

2018.10.26

私は会話をすると自分の世界が広がる気がします。友達とでも、初対面の人とでも会話をすると自分では思いつかない考えに出会えたり、知らないことについて知ることができたりと、とても刺激になります。それはもちろん、こどもたちと会話をすることに関してもそうです。むしろ、こどもたちの考えは、私たち学生よりも柔軟で驚かせられることが多いように思います。

先日の活動中には、こんなことがありました。ある女の子に「今日は何する?」と聞くと、その女の子は「カチューシャをつくりたい」と言い始めました。お店で売っているようなカチューシャをつくろうとするとワイヤーや布が必要になります。しかし、エコールには布もワイヤーもありません。「どうやってつくる?紙とか使う?」と問うと、女の子は考え始めます。すると、何か思いついた様子。「あのくねくねして形をつくるやつを使おう!」私は最初、何のことを言っているのか分からず戸惑いましたが、一緒に探してみると彼女がモールについて話していたのだということが分かりました。

確かにモールなら中にワイヤーが入っているため、形を変えれば頭に合わせることができます。私は、カチューシャをつくるということからモールに思い至った彼女を、単純にすごいと思いました。ワイヤーがないなら紙でしかつくれないかなという考えしか、私には浮かばなかったからです。その後、カチューシャは無事完成。彼女は独力で考えて最後までつくることができたので、とても満足しているようでした。このように、こどもたちは、会話をすることで創造性を発揮することがあります。そして、このような機会は、私たちに会話の大切さを実感させてくれます。
 

学生と話し合いながら光の実験です

学生と話し合いながら光の実験です

また、会話をすることが自分の気持ちに変化をもたらしてくれることもあります。例えば、落ち込んでいるときに友達や家族に励まされると元気が出てきますし、不安なことや嫌なことを話してみると心がスッと楽になることもあります。エコールの活動に取り組んでいると、こどもたちが学生との何気ない会話を通してみるみるうちにやる気を出す光景を目にすることもできます。

これは私が小学校低学年の女の子についていた時のことです。彼女は今日やることとして、学校の宿題を持ってきていました。席に着くなり宿題を机に広げ、問題を読み始めましたが、難しい問題だと分かると途端にやる気をなくし、話し始めてしまいました。話の区切りの際に「宿題やらないの?」と聞いてもお構いなし。どんどん話を続けます。そんな時、話題が私のしていた腕時計の話になりました。すると、隣で会話を聞いていた学生が自分の腕時計を女の子の腕につけてあげ、「この時計が〇分になるまでにここまでやろうね。」と一言。これを聞いた女の子はさっきとは別人のように宿題に取り組み始めました。たまたま話の流れで出てきた腕時計がきっかけとなり、彼女のやる気を宿題に向かわせたのです。

学生と共に集中して課題に取り組む様子

学生と共に集中して課題に取り組む様子

この出来事は、私にとってとても興味深いものでした。目の前にあった宿題とは全く関係なかった話題がきっかけで、彼女は宿題へのやる気を出すことになったのです。会話の仕方によってはこどもたちの自発的な学習や活動を促すことができる。これはエコールの活動の中での大きな発見でした。これからの活動では、会話の仕方を工夫して、こどもたちのやりたいことや、興味のあることを引き出したいと思うようになった、とても印象的な出来事でした。

ここまでこどもたちとの会話について書いてきましたが、エコールリーブルの活動の理念として、こどもたちと対等に向き合うことが挙げられます。これはこどもたちの目をきちんと見ながら、今日やりたいこと、興味のあることは何なのかを、会話を通して探っていくことを意味します。私はこどもたちと話を始めるとき「今日は何するの?」と必ず聞くようにしています。すると、こどもたちは「今日はこのワークのここまでやる」「日本地図のパズルやりたい」「今日はまだ決めてない、何しよう?」などなど、様々な答えを返してくれます。こどもたちがやりたいことを提示してきたときには、そのことをやり遂げられるように全力でサポートしますし、なければ一緒に考えていきます。

もちろんやることがないというこどもに対して、いつでも良い提案ができるとは限りません。そんな時は、こどもたちに学校の話や習い事の話、今熱中していることなどを聞くことで良い案が浮かぶこともあります。あるいは、ただ単に会話を楽しんでいるときに、こどもたちが学生の話から興味のあることを見つけ出すこともあります。普段の会話からやりたいことを見つけ、共に考えながらそれを形にしていく。これはとっても素敵なことだと思いますし、それが私たち学生との会話を通して起こることで、こどもたちがいきいきとするだけでなく、私たちまで本当に嬉しくなったりするのです。

私たちは親や先輩、後輩、友達など様々な立場の人と交流し、会話を通して多くのことを学びます。これまでに書いてきたように、思わぬところで自分では考えられなかった意見に出会えたり、それまでは気づかなかった相手の興味関心を引き出したりすることもできます。会話には多くの力がありますが、その力を上手く使いながら、エコールの活動で、こどもたちと向き合っていきたいと思います。

(たなか)

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千葉大学教育学部の学部生を中心に、地元の小・中学生に無償で勉強を教える活動を行う。2013年5月に活動を開始。一人ひとりのこどもと向き合い、彼らのやりたいことや苦手を把握しながら、彼らに応じた学習機会を提供している。HP: https://ecolelibre.jimdo.com/

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