Ecole Libreの現場から
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Vol.9 積み上げてきたもの

2018.06.27

先月、エコールリーブルは活動開始から4周年を迎えました。
この4年間で、本当にたくさんのこどもがエコールリーブルに来てくれたと思います。3年以上も継続して来てくれているこどももいれば、進学や引っ越しなどを理由に来られなくなってしまったこども、今月から来てくれるようになったこどももいます。また、スタッフとしての大学生も代替わりを繰り返し、活動を始めた時のメンバーはもう全員が大学を卒業してしまいました。
このように、こどもも大学生も移り変わってきたエコールリーブルですが、今回の記事では、そんな中でも僕たちがずっと続けてきた取り組みを紹介したいと思います。

エコールリーブルが4年前から続けている取り組み、それは「こどもの記録ファイル」です。
これは来てくれているこども1人1人に対して、その日ごとの学習内容、様子を記録しているものです。日々の活動では、あるこどもに対して、毎回異なる大学生が対応するようにしているので、このファイルにはたくさんの大学生が書いたそのこどもに関する記録が詰まっています。

記録ファイルはこのような様式になっています。

記録ファイルはこのような様式になっています。

この記録を取っている一番の目的は、大学生の間でこどもに関する情報を共有することです。毎回、異なる大学生が対応しても、ファイルに目を通せばそのこどもの性格や学習状況を把握できるようにしているのです。また、その日あまり理解できていなかったと思われる内容や、学習以外で気にかけてあげたいと感じた点を引継ぎ事項として記入することで、より継続的なアプローチに繋げることも重要な目的としています。

しかし最近になって、僕たちが4年間取り続けた記録ファイルは、そのような目的を実際に果たしているのだろうか、と疑問に思うようになりました。そこで、何人かのこどものファイルを読み返すことで、この記録の意義について改めて考えてみることにしたのです。

最初に読んだものは、2年ほど継続して来てくれている低学年のこどものファイルです。そのファイルの中で、そのこどもが苦手としていた、時計の問題についての記述が興味深いと感じたので、その記録の一部を書き出してみたいと思います。

4/24 「時刻の読み方に苦戦していました。」
5/11 「お母さんから伺いましたが時計が苦手みたいです。いま何時?って何回も聞きましょう。」
5/22 「時計の見方はマスターしていましたが、165分は何時間何分?という問題が苦手みたいでした。」
5/25 「自分で時計を書かせて、針を書きながら問題を解きました。いま何時?と聞くと、気持ちの切り替えがつくようです。」
6/5 「けっこう時計ができるようになってきたかも。引き続き確認してください。」
6/8 「時計が読めるようにはなってきた。でも、○時45分の30分後は?などがまだ完全にはできない。実際に時計を使ってやるといいと思います。」
6/19 「(実際に時計を使ってやってみた)時計読めるようになってきた。ただ、集中力続かないね。時計飽きずにやる方法ないかなあ…。」
6/22 「時計は何時を示せば良いかが分かると、しっかりやり切れる!!」
8/3 「時計完ぺきです。」

中には、こんなに詳細に記録していた大学生もいます。

中には、こんなに詳細に記録していた大学生もいます。

これは、ファイルの中から時計に関する記述があったものの一部を抜粋したものです。最後が「時計完ぺきです」で終わるのは少し出来過ぎている気がしますが、この記録からは、そのこどもが苦手としていた時計の問題を克服するまでの過程と、大学生が行ったいくつかの工夫が読み取れます。例えば、大学生が行った工夫としては、今の時刻を何度も確認すること、自分で時計を書いてもらうこと、実際の時計を使ってみることなどが挙げられるでしょう。このように個々人が行った工夫は文章にすることで、それがノウハウや学習の指針として残るのです。

継続して行っていきたい取り組みが強調されています。

継続して行っていきたい取り組みが強調されています。


実際に時計を使ってみることは、エコール定番の学習法になりました。

実際に時計を使ってみることは、エコール定番の学習法になりました。

また、他のこどものファイルを読んでいて、新たな気づきを得ることもありました。そのこどもは、3年ほど前から今に至るまでエコールに来てくれている高学年のこどもです。最近では、学年が上がったことで学習内容が難しくなった算数に少し苦戦しています。
3年分の記録を読み返していると、そのこどもについて「分数の理解があやしいのでは」と書いている学生が多いという点に気づきました。

10/26 「分数の計算を間違えていたので、重点的に復習してほしいです」
12/1 「3/2×8の計算が難しかったみたい」
5/18 「最後の約分を間違えていることがあるので、ミスに注意しよう」
6/12 「約分を忘れていたり、帯分数を時々まちがえていたりするので注意!」

それぞれ書いた人によって言葉は違いますし、書いた時期もバラバラですが、やはりそれらの記述から「分数の理解があやしいのでは」ということが推測できます。この点にもっと早くから気付かなかったことは残念ですが、これからの活動では分数の理解度について注意して見ようと思いました。このように長期的に見た傾向が浮かび上がることも、記録を取っているメリットだと言えるでしょう。

古株のこどものファイルには、4年分の記録があります。

古株のこどものファイルには、4年分の記録があります。

さて、ここまで、ノウハウが残ることや長期的な傾向が見えることなど、こどもに関する記録を取っている意義について確認してきました。しかし、多くのファイルを読み返す過程で、残念ながら今のエコールリーブルではこの記録を有効活用できていないように感じました。先ほど述べたような、意義が感じられる例も少なからずありますが、十分に記録を取っていなかったり、過去の反省を生かせていなかったりなどということも多く見られます。
やはり、僕たち大学生は今一度、記録を取っていることの意義について認識しなくてはならないと考えさせられました。これからは、より有意義な記録を積み上げていけるようにしていきたいです。

…と、ここで今回の記事は締めくくるつもりでした。
しかし、この「こどもの記録ファイル」について、もう少しだけ書きたいと思います。今回、多くのファイルを読み返したことで、僕は「記録」が持っていたある意外な価値を感じたのです。
その価値とは「思い出」です。
4年の間、書き続けたファイルには、たくさんの大学生がたくさんのコメントを残していました。

8/1 「本にのっている作り方ではないオリジナルのクッションカバーを作ることができました。」
5/8 「応援の練習をしていた(笑)運動会ガンバレー」
12/7 「乾燥剤をばらまいていました、注意しましょう…」
11/14 「来週が定期テストだそうです。応援よろしくおねがいします!」

こうした一見何でもない記録でも、一つ一つ読んでいると、あの頃はこんな活動だったとか、あの人はよくこんなことを言っていたとか、たくさんの事を思い出します。そして、そうした思い出は、懐かしさだけでなく、これからの活動をより良くしていきたいというモチベーションを僕にくれるのです。
「もっと有意義な記録を!」という主張をするつもりでしたが、記録を取るということは、ただそれだけで案外価値があるものかもしれません。

(はんざわ)

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千葉大学教育学部の学部生を中心に、地元の小・中学生に無償で勉強を教える活動を行う。2013年5月に活動を開始。一人ひとりのこどもと向き合い、彼らのやりたいことや苦手を把握しながら、彼らに応じた学習機会を提供している。HP: https://ecolelibre.jimdo.com/

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