Ecole Libreの現場から

Vol.4 ルールと自由について

2017.12.27

学校や塾など、こどもをとりまく環境には、時に理不尽と感じるルールがある。みなさんも、こどもの頃にそう感じたことはありませんでしたか?

ぼくが中学生の頃、自習になった英語の授業中に歴史の教科書を読んでいたら、先生に「英語の授業中なのだから英語の勉強以外するな」と咎められた、ということがありました。確かに英語の授業中ですから、その先生の言い分はもちろん理解できます。ただ、当時のぼくは同じ「勉強」をしているのになぜ怒られたのかと、とても不服に感じていました。このように、こどもと大人の関係においては、互いの認識のズレをすり合わせる機会がないままに大人の認識がルールとなってしまい、それに対してこどもは理不尽に感じるという場面が往々にしてあると思うのです。

この活動を始めたばかりの頃、ぼくはエコールリーブルにはルールはいらないと思っていました。もともと、エコールリーブルという言葉はフランス語で「自由な学校」を意味していて、活動開始当初からこどもが自由に学べる環境が活動の理想とされてきました。「静かに勉強しなくてはならない」「席を立ってはいけない」といったルールはエコールリーブルにはありません。ぼくはそんな理念を知って、こどもたちの行動を制限するルールが全くない環境こそ「自由な学校」であり、こどもたちともフラットでよい関係を築けると考えていました。

しかし時が経つにつれて、エコールリーブルにはルールが少しずつ増えていきました。例えば、「建物の中でお菓子を食べない」「こどもたちだけで外の道路には行かない」といったものです。

机にはこんな紙が貼ってあります

机にはこんな紙が貼ってあります

ルールを設けるようになった背景には、エコールリーブルの規模が大きくなったことがあります。来てくれるこどもの人数が増えたことで、大学生が全員に対応することが難しくなる時もあり、全員に共通するルールを設けることで状況に対処するようになったのです。集団の規模が大きくなると、その環境を維持するためにルールが増えていくことは、やむを得ないのでしょうか。ぼくはルールの必要性を実感しながらも、ルールが増えていくことにどこか疑問を抱いていました。

そんな中、先月こんな出来事がありました。小学校低学年のこどもたちは、宿題を終えると様々な遊びをしたりもするのですが、その日は外のガレージに出て、紙で作ったボールを使って遊んでいました。そんな時、ある男の子がはじいたボールが外の道路に出てしまい、通っていた車に迷惑をかけてしまったのです。ぼくは、その男の子たちとこんな話し合いをしました。

「ねえねえ、今、外にボールが出てしまったけどどう思う?」
「危なかった、車の人も怒っていたかも」
「次からそうならないようにするには…?」
「ボールが外に出ないような遊びにする!」

このような会話を経て、このボール問題は解決したかのように思えました。しかし、それから10分と経たないうちに、こどもたちはボールを2回も3回も外に出してしまったのです。ぼくはもう一度、こどもたちと話しました。

「さっき、もうボールを外に出さないって言ってなかったっけ?」
「だってしょうがないじゃん」
「もしそれができないのなら、ボール遊びは禁止だよ?」
「じゃあいいよ禁止で、他のことやるから」

そう言ってこどもたちは別の遊びを始めました。ぼくは、また1つルールを作ってしまったと思いました。そして同時に、これで良かったのだろうかとも思いました。この状況では、大学生にダメと言われたから、そういうルールがあるから、ボール遊びをしてはいけないとこどもたちは認識しているでしょう。けれど、それってこどもにとっては「理不尽なルール」なのではないか…。

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お絵かきしたり、時には歌ったり、こどもたちの活動は自由です

お絵かきしたり、時には歌ったり、こどもたちの活動は自由です

そう考えながら、「どうすればよかったんだろう…」となんとなく呟いていました。すると、隣に立っていたある小学生のこどもが「ボールが外にでないように、柵を作ってから遊ぶっていうルールにすればいいのに」と返してくれました。その一言にぼくは気付かされました。このこどもは、ボール遊びについて自分の頭で考え、柵を設けるという自分なりのルールを考えているのです。これって理想的なのではないでしょうか。

集団が大きくなればなるほど関わる人も多くなりますから、ルールはどうしても必要となってくるのだと思います。この際、学生が決めたルールに従わなければいけない、というだけだと、こどもたちにとっては時に理不尽と感じられることもあるでしょう。けれども、こども自身で考えた自分なりのルールを生み出すことによって、それを克服できるのではないでしょうか。

今までのぼくは、エコールリーブルが自由であることは、ルールの有無と関係していると思っていました。しかし今は、そのルールは誰が作ったのか、ルールについてこどもは自分の頭で考えているのか、ということこそ重要であると考えています。ルールが無いことではなく、自分たちのルールで生活できることこそが本当の「自由」と言えるのではないでしょうか。

エコールリーブルは学校や塾と比較してまだまだ小規模ですし、こども一人ひとりと話す機会も多いです。そんな環境を活かして、これからもこどもたちと一緒にルールについて話し合っていければいいなと思っています。そして、またこどもたちがボール遊びをしたいと言えば「ボール遊びルール検討会議」でも開催して、一緒にルール作りに挑戦してみたいです!

(はんざわ)

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千葉大学教育学部の学部生を中心に、地元の小・中学生に無償で勉強を教える活動を行う。2013年5月に活動を開始。一人ひとりのこどもと向き合い、彼らのやりたいことや苦手を把握しながら、彼らに応じた学習機会を提供している。HP: https://ecolelibre.jimdo.com/

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