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vol.17 BUSINESS FOR PUNKS

2017.07.06

BUSINESS FOR PUNKS ルールを破り熱狂を生むマーケティング
ジェームズ・ワット 著
楠木健 解説
高取芳彦 訳
2016年 日経BP社

好きなことを好きなようにやりきる

PUNK IPAというビールがある。

こと西千葉では、これを売っている店は今のところ一軒(酒舗にしうら)しかない。店は私の家からそう遠くもないが、かと言って、そう近くもない。今飲みたいなぁと思ってパッと買いに行くには若干距離がある。行ったところで、店の定休に当たったらもう万事休すだ。また、値段が高い。元からそもそも高い。物によっては普通のビールの2倍くらいすることもありそうだ。ビールでさえ高いということで発泡酒が出ているこのご時世に、である。それでも私はこれを買って飲む。なぜなら、美味いからだ。美味いものに抗うことは、できない。それくらい、このビールは美味いのである。

このビールに冠された「PUNK」。一体何を意味するのだろうか。Wikipediaによれば、それは「パンク・ロックを中心に発生したサブカルチャー」であり、「音楽、イデオロギー、ファッション、アート、ダンス、文学、映画などの表現形態」を持つもの。個人の自由を訴えたり、反体制主義、反権威主義を主張したりするものらしい。つまり、今まであった概念を破壊し、新たな価値を創造するのがパンク、ということになるようだ。そして、それを体現する人々をパンクス(punks)と呼ぶ。それは革命を起こす人たちのことを指すと言っても過言ではないだろう。

そんな彼らのためのビジネス、というタイトルの本書。サブタイトルには「BREAK ALL THE RULES」(決まりは全てぶち壊せ:弊意訳)、帯には「人の話は聞くな」「アドバイスは無視しろ」とある。のっけからなかなかどうして刺激的だ。著者はBrewDog(ブリュードッグ)というクラフトビールの会社の創始者であり、何を隠そう、私の大好きなPUNK IPAを生み出している張本人だ。

彼にとってパンクの本質とは「物事を自分の流儀でやるために必要なスキルを身につけること」である。彼は「イギリスのビール産業に革命を起こし、この国のビール文化を変える」という使命を果たすべく、2007年に会社を設立。わずか3万ポンド(約700万円:当時のレート参照)の資金で、スコットランド北東部の寂れた工業団地の一角にある倉庫から、親友と犬一匹と共に始めた小さな会社だったが、使命を果たすためにはどんな手間も厭わなかったようだ。

ひたすら美味いビールを追求するためだけに。お金の活用の仕方や銀行やお客との交渉の仕方から、やたらとチャレンジングな取り組みの数々に至るまで、微に入り細に入り、全て自分たちで考えて、なんでもやる。まさに「自分の流儀」で現状を打破し続けてきた結果、設立から毎年黒字で8年足らずのうちに売上5,000万ポンド(約70億円:本書参照)を突破。従業員は500人以上、現在世界50ヵ国以上に商品を出荷し、また世界各地に40店舗のビアバーを構えるまでになった。ちなみに株主となって彼らを支える熱狂的なファンの数は、世界に55,000人ほどいるんだそうだ(2016年時点)。

自分たちが好きなことを、好きなようにやりきる。好きだからこそ、とてつもないエネルギーを生み出せるのだろう。そして最高なものができるんだから、本当に最高だ。PUNK IPAを初めて飲んだときの衝撃。パンチが効いていて、且つとってもフルーティなその味に、「こんなの初めて」って思っちゃったら最後、そりゃあファンにもなってしまうし、なんなら喜んで支えようと思ってしまうってことだろう。世界中に熱狂的なファンがいるのも頷ける。ということで、この夏はPUNK IPAで、彼らの「パンク」を感じ取ることから始めてみてはいかがだろうか。

参考:
PUNK IPA
パンク(サブカルチャー)
BrewDog
ポンド円

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