大きく小さく「こども」を考える
Vol.7 向き合うことから生まれるもの

Vol.7 向き合うことから生まれるもの

2017.06.16

6月になりました。時が経つのは早いもので、携わっているプロジェクトたちが、ともに4年目に突入しました。その中でも今回は、わたしたちが活動をサポートしているEcole Libreでの活動にまつわるエピソードから、こどもについて考えてみようと思います。

Ecole Libreは、千葉大学教育学部の学生が中心となり、地元の小中学生に無償で学習機会を提供している団体です。各メンバーが、こどもたち一人ひとりと対話することを大切にしながら活動しています。

こどもたちの多くは、まず宿題やプリントを机に広げ、勉強を始めます。勉強も一段落すると、笑顔で学生と話をしてみたり、ちょっと友達同士で話してみたり、人によっては植物に水やりをしていたりも。常に楽しそうな様子が見て取れるので、様子を見ているこちらもなんだか笑顔になります。

Ecole Libreの日常風景

Ecole Libreの日常風景

Ecole Libreのポスターをつくっているようです

Ecole Libreのポスターをつくっているようです

わたしはたまにEcole Libreのメンバーから、活動内容の相談を受けたり、普段の様子について教えてもらったりするのですが、その中で一つ興味深い話がありました。小学校1年生の頃から通ってくれており、現在小学校3年生の男の子の話です。

彼は、Ecole Libreに来始めた当初、本当に無口だったとのこと。ひたすら漢字練習と計算問題に取り組み、わからない問題があったとしても、自分から質問することができない。最初の数ヶ月は、相槌を打ってくれるくらいで、なかなか会話にはなりにくかったそうです。

でも、そんな彼が、Ecole Libreに通い出して半年ほど経ったあるときに、自分の好きなものが「虫」だと初めて教えてくれ、それをきっかけとして話すようになったそうです。今では大好きな「虫」について、いろいろと教えてくれるばかりか、捕まえた虫を見せてくれたり、一緒にインターネットで育て方を調べたりするようにまでなったとのことでした。そして、「虫」だけじゃなくて、勉強に関係ない話なども普通にしてくれるようになったそうです。

とてもいい話だと思う一方で、なぜ話してくれるようになったのか、非常に気になりました。これには、Ecole Libreが常にこどもたちに対して話しかけを行っていることが奏功したようです。彼の場合は、メンバーが継続的に話しかけを行ったことで、半年ほど経ったとき、自分の好きなものについて教えてくれるようになったとのことでした。

Ecole Libreでは、こどもと学生、一対一での対話を大切にしています。メンバーは、ただ「勉強をしましょう」ではなく、好きなこと・嫌いなことは何かといったことから、学校で何があったのかといったことまで、勉強内容に直接関係ないようなことでも、その子に関係することならなんでも話すそうです。 そして、相手がうまく話せなくても、変に促したりせず、来てくれる度に話しかけを行っている、とのことでした。

こどもたちは、言わずもがな一人ひとり性格が異なります。信頼感を覚えたり、自己開示できるようになったりするタイミングもまちまち。これは大人のわたしたちでも変わらないことだと思います。もしこれを、その人に合わないタイミングで話すよう急かされたりしたら。多分話すことそのものを辛く感じると思いますし、思っていることと違うことを言ってしまう、なんてことも起こるかもしれない。

Ecole Libreがやっていることは、こどもたち一人ひとりに寄り添うことなんだと思います。こどもたちを何かの尺度で「評価」したりすることなく、その子のペースに応じてやりとりし、受容する。そのように向き合ってもらえたら、きっと安心だと感じられるのだと思います。そして、心の準備が整ったときに、それまではできなかった、何か新しいことができるようになるのかもしれません。

このような話を聞かせてもらうと、こどもたちにとって向き合うということがどれだけ大切かを感じさせられますし、それを自然と行うようになったEcole Libreの文化というのはとても素敵だな、と思います。そして、こどもたちのみならず、人と人とが関係を構築していくには、「評価」をするのではなく、各々向き合って、受容してみようとすることが大切なのかもしれないですね。

わたしとしても、自分のこどもや家族、そして自分の身の回りの人と向き合う際には、頭の片隅に置いておきたいなと思いました。と、自らを省みてみたところで、今回は筆を置かせていただきたいと思います。

三瓶 伊万里
三瓶 伊万里 | 記事一覧

1984年、福島県生まれ。大学がリベラルアーツを標榜することから、所属は教育学科ながら、他領域の学問にも自由に触れる経験をする。07年に住友商事(株)に入社、鉄鋼事業に従事する。サラリーマンとしての暮らしの在り方に疑問を持ち始め、まちづくりに携わりたいという想いを強くする中、同社を12年に退社。同年(株)北山創造研究所に入社する。14年には同社を退社、現在は新たな社会の在り方を研究しながら、実践の可能性を模索している。

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