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vol.14 LIFE SHIFT

2017.01.28

LIFE SHIFT
リンダ・グラットン アンドリュー・スコット 著
池村千秋 訳
2016年 東洋経済

災厄を福音に変えるには

最近のわたしたちの社会では、人工知能(AI)やIoT(Internet of Things/モノのインターネット)、ドローンや自動運転、ブロックチェーンといった、技術革新にまつわるトピックが紙面を賑わすことが多いように感じる。みなさんもきっと耳にしたことがあるのではないだろうか。メディアでも数多く取り上げられるこれらの最先端技術は、きっとわたしたちの暮らしを大きく変えることになっていくのだろうが、もう一つ、これらの目立つトピックの陰で、ともすると忘れられがちな、わたしたちの暮らしを大きく変えてしまうであろう重大な要素がある。それは、人類が既に経験しており、今や当然化してしまっている、長寿化である。

日本における長寿化(高齢化と言ってもいいかもしれない)は話題になってから久しい。また日本はその「分野」においては大分進んでいる国でもあるらしい。例えば、世界保健機関(WHO)が出している長寿国ランキングを見てみても、日本は男女、そして女性の平均寿命でトップ(ちなみに男性では6位タイ)の座についている。そしてこの(長寿化ではなく)「高齢化」という言葉が語られる際は、保険制度や年金制度の限界、介護や労働人口減少と、大抵は「問題」として取り上げられることが多い、ように感じる。そんな状況下、これからは人生100年の時代が到来しつつある、なんてことを耳にしてしまったとしたら。定年を迎えた後の人生をどうしたらいいのか、生活費はどうしたらいいのか、今までなんとなくイメージしていた生き方はもうできないのか。死ぬまで働かなければならないのか。こんな考えが頭を擡げて、もう救いようのないような気もしてしまう、かもしれない。もう加齢自体が恐ろしくなってしまいそうなところだが、そこへ別の可能性を指し示すのが、本書である。

本書では、人生100年の時代が到来するとして、その「100年ライフ」におけるライフスタイルはどのように変化していくのかについて、著者たちの見通しを幾つかの視点で提供してくれている。人生のステージが教育・仕事・引退だけでなくなってくるのではないか。お金についてはどう考えればよいのだろうか。お金だけでなく、お金に換算できない人生の「資産」も重要なのではないか。それはどのように「運用」していけばよいのだろうか。では時間については、人間関係についてはどう考えていけばよいのだろうか。と、このように、来たるべき変化と、それに対してどのように考え、備えておくとよいか、様々なデータや研究内容に触れながら、著者たちによって導き出されたビジョンが凝縮されている。それらの視点に触れられるだけでも、視野が広がること請け合い、一読の価値はあると思う。どのような可能性が提示されているのか、是非本書に目を通していただきたい。

人間は変化を嫌う生き物だ、と聞いたことがある。自分を振り返ってみても、確かに日々のルーティンが変わるのは面倒だし、仕事でも私生活でも、突如対応せざるを得ない事案が勃発すると、結構ストレスフルなものである。慣れた暮らしから逸脱することには、不安や恐怖さえ覚えることもあるだろう。だが、変化を厭い、目を背けていると、いつの間にやらその変化に置き去りにされてしまうこともあるかもしれない。自分が変化しなかったことのツケは、結局は自分に返ってくることになるのではないだろうか。では、その来たるべき変化を受け入れ、向き合い、行動を起こそうと決めることができたとしたら。それは、変化を災厄としてではなく、当の本人自身の力で福音として捉える契機となるに違いない。本書に目を通し、自身の「100年ライフ」について思いを馳せるということも、そんな契機の一つになるのかもしれませんよ。

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