この街のまだ見ぬ場所を目指して私たちは今日も練り歩く
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vol.2 この街のなにげない日々に寄り添うパン屋

2016.09.01

暑さの中に、少しずつ秋の気配を感じはじめた今日この頃。まだまだ日差しは強いが、風が秋の匂いを運んでくる。そんな季節の変化を感じるのを楽しみながら、散歩がてらお昼休みにふらりと行きたくなるお店がある。オフィスを出て、すぐに見える「LOVE」のオブジェが置かれたロータリーを反時計回りにくるっとまわり、住宅街へとのびる道をてくてく行く。意識しないと通りすぎてしまいそうなくらいそっと佇むパン屋さんがある。その名も「boulangerie dodo(ブーランジェリードド)」。
1年間のフランス修行を終えた店主が、5年前に開店したお店。dodoはフランス語で「ねんね」の意味。フランスでの修行時代、ホームステイ先のおばあちゃんが、仕事で疲れてソファでうたた寝する彼女に「ド、ド、」と優しくささやいたように、彼女は毎日パンの生地たちへ「ド、ド、」とささやくように愛をこめてパンを焼く。

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2坪ほどの売場に並ぶパンはすべて、店主が一人で焼いている。パンを売るのは、店主のお父さん、お母さん、お姉さん、そして高校時代からの友人の4人が日替わりで。文字通り家族経営の小さなお店。朝に弱い店主が無理なく働ける、少しゆっくりな11時のオープン。開店時間のちょっと前には、お店の前でオープンを待つお客さんも。開店後も、小さな店内にはお客さんが入りきらず、お店の外に順番待ちのお客さんが並ぶこともしばしば。パンを買いにやってくるお客さんは、大学生から、子連れのお母さん、ご年配の方までと、幅広い。近所で暮らす人々が、店主の焼く素朴でやさしい味のパンを求めて、ひとり、またひとりとやってくるのだ。日によっては、お昼を過ぎるとほとんどのパンがなくなってしまうこともあるほど。

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dodoのパンは、都会の華やかなパン屋さんのそれとは違い、どれもしっかり素材の味がする。特別な日に食べたい気取った味ではなく、いつもと変わらない、なにげない日々の中にずっとあってほしい、そんな味がするパン。日差しが気持ちいい日には、dodoのパンとコーヒーを片手に外で軽いお昼ごはんなんてのが、日々の暮らしの中でのちょっとした贅沢時間。朝寝坊した休日のブランチにも最高だ。パンよりも断然お米派の私だったけれど、dodoのパンと出会ってから、すっかりパンの虜。そのままでも美味しいdodoのパンを、今日はどうやって食べよう、と考えるのが楽しい。季節の野菜をはさんでサンドイッチにしようか、スープにひたひたに浸して食べようか、お気に入りのピーナッツバターをたっぷりつけて食べるのも悪くない。きっとdodoのパンを買って帰ったみんなも同じように、毎日の暮らしの中でdodoのパンを楽しんでいるだろう。オープンから5年たった今、dodoのパンはすっかりこの街の人々の暮らしに欠かせないものとなった。そんなことを先日行われた、dodoの5周年パーティーで感じた。日も沈みかけた頃に始まったパーティーへ、dodoのパンを愛する地域の人々が次々にやってきたのだ。パーティーに来た人全員にパンが配られ、それをみんなが「美味しい、美味しい、」と言って笑顔で頬張った。美味しいパン屋さんは街が元気であるために、なくてはならない存在だと思う。美味しいパン屋さんが身近にある生活はとても豊かだ。だって、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、みんなパンが大好きだから。焼きたての匂いにみんな顔を緩ませる。ふわふわ、もちもち、どっしり、それぞれのお気に入りはあるけれど、みんなパンが大好きだ。

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dodoの人気の秘密は、パンの味だけではない。店主や、売り場に立つ家族の人柄に惹かれている人も多い。その中でも特にお父さんは人気者。お店に寄る時、今日はお父さんいるかな、なんて思いながら中をのぞく人も少なくないだろう。家族みんなで助けあって営むアットホーム感が、やさしいパンの味と相まって、よりいっそう親近感が湧く。飾らないけれど、可愛らしく心地良い店構えや店内、パンの包みもまた良いのだ。

明日も明後日も、毎日変わらずそっとそこに佇み、いつもと変わらぬパンがならび、焼きたてのやさしい香りが通りまで漂う。dodoがそこにあるかぎり、私たちはこの街で安心して暮らせるのだ。

■boulangerie dodo(ブーランジェリードド)
web : http://paindedodo.exblog.jp/
住所: 〒263-0042千葉県千葉市稲毛区黒砂1-14-5
営業時間: 11:00-18:00(商品がなくなるまで)
定休 毎月1日(ついたち)、日曜日、月曜日
TEL : 050-1075-9654

西山 芽衣
西山 芽衣 | 記事一覧

1989年、群馬県生まれ。大学で建築を学ぶ中で人の暮らしに興味を持ち、(株)北山創造研究所でまちづくりなどに携わる。2014年同社を退社後、大学時代から暮らす西千葉で、自らの生活を実験台として新たな生活の在り方を模索している。衣食住、政治、経済、教育など、日々の暮らしの中で生まれる「なんでだろう?」や「こうなったらいいのに」を出発点に、自分たちの手で暮らしを変えていく実験に人々を巻き込み中。都市の中で自然に楽しく生きること、もっと楽しい社会を次の世代に引き継いでいくことを目指す。 facebook: https://www.facebook.com/MeiNishiyama  instagram: https://www.instagram.com/xxx_mei_xxx/  web: http://harapecolab.jp/

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