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vol.9 I AM ZLATAN

2016.08.17

I AM ZLATAN ズラタン・イブラヒモビッチ自伝
ズラタン・イブラヒモビッチ 著
ダビド・ラーゲルグランツ 著
2012年 東邦出版

自分を信じ続けた男

「破天荒」
 今まで人がなし得なかったことを初めて行うこと、前人未到の境地を切り開くこと (Wikipediaより)

これは、サッカーのヨーロッパリーグで得点王に輝き、かつ渡り歩いた全てのチームで優勝を経験した稀有なプレーヤー、ズラタン・イブラヒモビッチの自伝である。彼が彼自身、すなわち「ズラタン」本人として、歯に衣着せぬ物言いで、自分の心の内を包み隠さず語る本書の筆致は、過激さや毒も然ること乍ら、読者に楽しさや爽快さを感じさせ、シンパシーをも抱かせる。最初のエピソードを読んでしまうと、次に何が出てくるのかが気になって、頁を捲る手を止めることができない。

彼はスウェーデン・マルメ出身のサッカー選手であり、スウェーデン代表にも選出され、キャプテンまで務めている。しかし、ルーツはバルカン半島にあり、実はスウェーデン人の血は引いていない。ボスニア・ヘルツェゴビナ出身の父とクロアチア出身の母が移住先のスウェーデンで出会い、その間に彼が生まれている。移民コミュニティのあるローセンゴード地区で生まれ育った彼は、決して裕福な環境に置かれていたわけではない。むしろ結構なハードモードだったようだ。詳細は本書に任せることとしたい。

では、なぜズラタンは「ズラタン」足り得たのか。それは、彼が自分を信じ続けたからだ。自分が感じることに忠実だったからだ。少なくとも、本書を読むとそれがわかる。それこそ訳者あとがきにあるように「良い子はマネをしないように」と書かざるを得ないような極端なエピソードが並んではいるが、そしてそれだけでも十分目を引くのだが、特筆すべきはその点ではない。彼が自分自身を信じ続け、貫き続けることで、「ズラタン」という人生を築いてきたというその一点が、本書の肝なのである。

彼は本書の冒頭で、「すべての子どもたちに、この俺の想いを伝えたい」と書いている。私個人としても、常に周囲と違ってきた、また排除されてきたズラタンが、自分を信じ続けて「何とかなった」その人生を、本書を通じて追体験することをおすすめしたい。もしかしたら、「世の中いろいろあるけれど、俺だって何とかなったぜ」っていう気分になれるかもしれない、ですよ。

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