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vol.3 ネガティブな感情が成功を呼ぶ

2016.02.15

ネガティブな感情が成功を呼ぶ
トッド・カシュダン ロバート・ビスワス=ディーナー 著
高橋由紀子 訳
草思社

The UPSIDE of Your DARK SIDE/幸福学のコペルニクス的転回

邦題の「成功」という言葉を見る限り、ビジネス本、啓蒙本と目されてしまいそうなこの本だが、原題は「The UPSIDE of Your DARK SIDE」。ネガティブ感情の利点に目を向けるという、大袈裟に言えば「幸福学のコペルニクス的転回」をテーマとした良書である。

一般的に「ネガティブ」な感情と見られがちな、怒りや不安、自信のなさ、恥ずかしさ、罪の意識といった感情は、普段の生活で間違いなくわたしたちの中に生じるものである。経験したことのない方はおそらくいないだろう。
一方、現在の幸福学ではポジティブな感情を保つことが一つの真理として語られがちだそうだ。そしてその学問では、ポジティブな感情を抱いた状態を保つことをおすすめするのだが、実際は非常に難しい。というか不可能である。
本書では、寧ろ「ネガティブ」とされる感情を含め、自然に発する感情を全て活かすことが健全であり、またそうすることによって人生で成功する確率が高いと主張する。
不快感を手懐けることができれば、その束の間の不快感はさて置いて、結果として幸福になるというのである。内容の詳細は本書に任せるとして、これは目から鱗の発想だった。まさに原題通り、ダークサイドの良い点を活かすということであり、それは現在の幸福学が価値を認めてこなかった「ネガティブ」感情に光を当てる、画期的なものである、ようだ。

本書では「ネガティブ」な感情をうまく活かす方法、そしてうまく付き合う方法、すなわちテクニカルな面に関しても言及している。もちろん技術として実際の生活に活用していくことで、状況のコントロールをしやすい部分も出てくるだろうし、生きやすくもなる。その点だけでも非常に有益だ。
しかし、個人的に最も注目してほしいのは、やはり「ネガティブ」とされる感情の存在を容認し、しかもその価値をも示したこと、その「コペルニクス的転回」そのものなのである。

「ネガティブ」な感情を抱いた際に、自己嫌悪に陥ったことはないだろうか。自己憐憫に陥ったことは。「自分はダメな人間だ」と思ってしまったりしたことはないだろうか。
社会的に「悪いもの」「ネガティブ」と断じられてきた感情を抱くことで、自分を否定し、受け入れられなくなってしまい、「自分が嫌いだ」という経験をされたことがある方も、きっと少なからずいらっしゃるのではないか。
でも、本書はそんな嫌われる対象とされてきた感情たちの「居場所」を認め、かつ「そんな悪いもんじゃないよ」とその感情たちに対する認識を変えてくれることに一役買ってくれるのである。その感情たちが自分の中にも「存在していい」のだ、と認めることができれば、その感情ゆえに嫌っていた自分との戦いにもピリオドが打てる。少なくとも、戦いは減る。きっと、より生きやすくなった世界が見えてくるはずだ。

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