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vol.2「読まなくてもいい本」の読書案内

2016.02.04

「読まなくてもいい本」の読書案内 知の最前線を5日間で探検する
橘玲
筑摩書房

これからの世界を理解するためのガイドブック

この本では、「知のビッグバン」とも形容できる、20世紀半ばからの半世紀で起きた、従来の「学問」の秩序を組み替えてしまうほどの大きな潮流をパラダイムシフトと捉え、「ビッグバン以前」と「ビッグバン以後」に分類。ビッグバン以前の本は読書リストから(とりあえず)除外する、というかなり思い切った、潔い読書案内本である。本書で刺激的だったのは2点、その潔さと、紹介されるビッグバンの原動力そのものだ。

何か専門的な知識体系に触れるとき、「この本を読むべし」というものは結構多い、と思う。それは古典であったり新書だったりするが、過去の大家が書いた本や、その理論や概念などを紹介するものであったりする場合が多い。しかし、それを読むにも相応の時間と労力がかかる。そしてその間に新刊は発行され続け、自分たちのいるパラダイムも変化していく。読書リストは増えるばかり。その辺り、「知のビッグバン」でばっさりとそれ以前を切り捨てるスタンスは、非常に面白い。「まずこれさえ読んでおけば」という認識をさせてくれる本書は、時間がない現代人にとってもフィットするものなのではないかと感じる。

で、内容についてだが、これがまた非常に面白い。まずわかりやすさ。本書において、知のビッグバンを構成するとされる知識に関して、簡素な言葉で、エピソードやブックリストも添えて紹介してあり、門外漢にとっても親しみやすいものになっていると感じた。帯にある「高校生、大学生、若いビジネスパーソンのみなさんへ」という言葉は伊達ではない。

新たなことばを知る、ということは、新たな世界の見方を手に入れることにも近いのではないか、と思う。本書で紹介される「複雑系」「進化論」「ゲーム理論」「脳科学」「功利主義」の概要に触れることで、新たな世界の見方が手に入る方も少なくないのではないだろうか。特に、進化論の項での「10分でわかる「現代の進化論」」や、脳科学の項での「フロイトの大間違い」や「「自由」はどこにある?」は個人的に非常に面白かった。自分がなんとなく社会生活で学び取った知識と、最先端との知識の間には大きな隔絶があったということを思い知らされ、読書中、頻りと楽しい驚きが生じるのである。

「読まなくてもいい本」の読書案内ーー挑戦的なタイトルに見合った内容になっていると思うし、再読したくなる面白さだった。ただし、その刺激的な内容に触れ、新たな地平を望みたくなってしまうと、結局は「知のビッグバン」以降のブックリストが増えてしまうことにはなりかねない、かも。

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